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秘湯の定義?
インターネットのサーチエンジンで「秘湯」と入力すると、驚くほどたくさんのヒットが表示されます。
「秘湯」についてこれほど多くのファンや旅行業者であろう会社がそれぞれの情報や感想、レポートを寄せているのです。
それほどまでにニッポン人は温泉好きで、その究極の場所が「秘湯」なのでしょう。そしてまたその大半のサイトで“秘湯の定義”について触れられているのもおもしろい特徴のひとつと言えるでしょう。
それでは秘湯とはいったいどういうものを言うのでしょうか?
そもそも秘湯などというものは、山の奥深くにひっそりと沸き、多くの場合人の手が加わっていない、もちろん入湯料など取る人間もいない温泉のことを言ったのでしょう。
ところが、インターネットの爆発的な普及と共に「秘湯」は本来最も特徴的なの“希少価値”を失い、公然の秘密となり始めているのも事実でしょう。
それでも温泉好きなニッポン人たちは、休日ともなると一斉に車を山奥へと走らせるのです。
つまり、秘湯とは、「殆ど知られていない山奥の温泉」から「連休でもあまり人が押し寄せたりしない山奥の温泉」といったレベルにハードルが下げられ、比較的安直に楽しめる温泉として楽しまれているのでしょう。
秘湯ブーム
日本では古くから山奥にひっそりとある温泉を求める温泉マニアが多く存在していましたが、その傾向が特に強まっていったのは戦後高度成長期以降であると言われています。
その始まりは、高度成長期の真っ只中、景気の良い会社が社員へのご褒美として温泉宿へと旅行するようになり、一大歓楽地になってしまうにつれて本物の温泉を求める温泉マニアは喧騒から離れた温泉へと足を運ぶようになったわけです。
秘湯という言葉も、この頃から使い始められたと言われています。
1980年代に入ると、巨大な高層ビルで構成されている温泉ホテルや歓楽街を有した温泉地よりも、山奥の素朴な一軒宿を好む傾向が強まりました。
これがいわゆる秘湯ブームの始まりです。
ところが秘湯に一般客が大量に押しかけるにつれ、素朴さを売りにしていたはずの宿も快適な浴室のシャワーや水洗トイレなどの快適な施設が設けられるようになり、古くからの温泉マニアは「俗化してしまった」と嘆いている面もありますが、現在の「本当の意味での」秘湯は、長距離歩かないと辿りつけないような宿ばかりになっているようです。
秘湯旅館の組織
秘湯ブームによって、秘湯マニアや秘湯と呼ばれる宿はそれぞれ組織化され、秘湯マニアから「秘湯」として選ばれた宿は改めて「秘湯」を意識し、外観や内装に演出を加えて、より「秘湯」らしさを醸し出している宿も多いでしょう。
そうした宿の経営者が組織化されているものに、「日本秘湯を守る会」があります。
元は某旅行会社が主催する温泉旅館によって1975年に設立された組織で、秘湯を自負する全国各地の旅館が会員登録をしています。
登録においては、その加盟申請した旅館が会としての秘湯の基準を満たしている必要があります。
数時間山登りをしなければ着かない山間の宿や、電気も固定電話もないという施設も珍しくありません。
会員の旅館が多くないためか会員間の交流が深く、お客様の宿泊帰りに他の会員旅館を勧めてくれることもあるようです。
加盟しているのは、小規模から中規模の旅館で、民芸調・純和風旅館・山小屋風など秘湯のイメージに沿う施設が多いのも特徴のひとつでしょう。
秘湯マニアの組織
秘湯マニアの人たちはお互い趣味の一致する仲間が集まり、ファンクラブ的な組織を発生させてきました。
中でもユニークなのが日本秘湯を守る会の設立後、その名称をもじってできた「日本秘湯に入る会」でしょう。
「日本秘湯に入る会」は最初個人が遊びでつくったホームページだったようですが、いざスタートしてみると「どうしたら入会できるの?」という質問が頻繁だったために会員を募ったところ、わずかの間に大規模な会に成長したのだそうです。
会費は無料で運営はボランティアでやっていらっしゃいますが、会の趣旨に賛同する会員が運営に協力してくれるようになり、2000年11月には個人のホームページとは切り離して独自のホームページとして再スタートしました。
会の活動は会員専用の掲示板で温泉の情報交換をしたり、オフラインミーティングも盛んに行われているそうです。
このように「ニッポンの秘湯」とは、ただお湯がこんこんと沸いているだけの殆ど人間の手が加えられていないの温泉や山奥の一軒宿と、それらをこよなく愛する秘湯マニア、という両面で多数の組織や愛好会があり、湯煙の向とこちらで“身も心も温まる”コミュニケーションが展開されています。
秘湯のランク
「秘湯」という言葉にはどこか惹きつけられるものがあるのではないでしょうか?
文字通り、どこか秘密めいた、人に知られていない温泉のことなのでしょうが、その明確な定義や基準などはないようです。
一般的に考えられることは、獣道のような狭い山道を何時間も歩いて登り、藪や草むらを分け入った場所に突如現れる温泉、といったイメージなのではないでしょうか。
この場合、ただそこに温泉が沸いているのをたまたま誰かが発見し、口コミでほんの僅かな人にだけ教えられた、秘湯中の秘湯と言えるのでしょう。
その次のレベルでは、狭くとも人の通ることができる山道の奥深くにひっそりと佇む一軒の温泉宿です。山間地で電気や水道は引かれていないため、夜の明かりは石油ランプ、料理の支度にはカマドやイロリを使い、冬の就寝時には湯たんぽが配られる…そういった情景が、秘湯という名をより一層際立たせるものです。
このあたりまでが本来の言葉の意味である秘湯ではないでしょうか。
もう少し広範囲の秘湯としては、同じく山の奥深くにほんの数軒軒を連ねる温泉宿です。
電話や電気は来ているけれど水道はない、燃料はプロパンガスで普通に煮炊きはできる程度のインフラ環境で、マイクロバス程度の人数のお客様なら宿泊できますよ、といった温泉宿です。
いわゆる秘湯感といったものは若干希薄とは言え、比較的気軽に行けるミドル級の秘湯とでも言えるのではないでしょうか?
変わった秘湯
「秘湯」と聞いて一般的に想像するのは“山奥の温泉”というイメージですが、一概にそうばかりとは言えないようです。
例えば北海道にある「カムイワッカの滝」。
ワッカ川に架かる滝の2つの滝壺が湯船になった、天然の露天風呂です。
カムイワッカとは、アイヌ語で「神の水」を意味します。
夏には観光客が列をなす名所となっていますが、知床半島のウトロ側、知床大橋近くの「湯の滝入口」から徒歩で30分ほど沢を登る厳しいアプローチは、秘湯の名に相応しいものがあります。
湯の滝入口からのアプローチでは転落事故も多いので、わらじや渓流釣り用のブーツなどで足まわりをしっかりとしておきましょう。
同じ北海道でも「セセキ温泉」は、羅臼市街から道道終点の相泊に向かう途中の海岸に湧く温泉です。冬場の荒波に運ばれた石で湯船が埋没し、石を取り除いてようやく「湯船」が出現して入浴できる状態になるというワイルドこの上ない温泉です。
地元の人たちの自主管理にって成りたっているというありがたい温泉ですが、残念ながら脱衣所や目隠しなどはありません。
これぞまさしく海の秘湯と言えます。
川の中にある露天風呂
秘湯には、“川の中にある秘湯”という露天風呂温泉もあります。
温泉の名前を「尻焼(しりやき)温泉」といい、場所は群馬県の六合村(くにむら)という山村で、関越自動車道渋川伊香保ICから国道353号線で中之条へ、中之条から国道145号線で長野原へ、長野原から国道292号線、国道405号線六合村(くにむら)へ着きます。
そこからさらに県道37号線に入って長笹川の橋を渡ってすぐ。
露天風呂の近くに駐車場はなく、橋の手前の道路脇に駐車可能です。
尻焼温泉は長笹川の川底から湧き出す温泉で、その広さで有名。
川の上下に堰をつくりお湯が溜まるようになっています。
混浴というかプールのようなものなので、水着で入っている人がほとんどです。
ただし着替えるところがないので、入湯にはバスタオルを筒状に縫ってゴムひもを通したものを用意するなどの工夫が必要です。
地元の話によると、昔は河原を掘ってお尻だけつけて入ったことが「尻焼温泉」の名前の由来だそうで、痔に良い温泉と言われています。
川の全部が熱い温泉というわけではなく、全体的にはぬるくて、温泉の湧き出ている部分の川底を深く掘って湯船にしています。
つまり水面下に湯船があるようなもので、隠れた湯船は3ヶ所ほどあるそうです。
野湯1
秘湯の中には、野湯(のゆ・やとう)が最もレアなものと言えるでしょう。
野湯とは、文字通り自然の中に自噴している温泉で、なおかつその源泉を利用した商業施設が存在しない場所のことをさします。
その形態は様々で、一部の野湯には硫化水素ガスなどの火山ガス発生地帯のため入浴に生命の危険を伴う場所もありますし、自然保護の観点や所有者の許可が必要などの理由で立ち入り禁止となっている場所もあります。
山肌から源泉が染み出してきていたり、まるで地獄地帯のように地面のあちこちから源泉が自噴している場合もあります。
湯船はない場合が多く、地面を掘ったり持参したビニールプールやビニールシートなどで即席の湯船を作って入浴します。川原毛大湯滝、カムイワッカの滝、弟子屈町の池の湯、登別温泉の湯の川、尻焼温泉の露天風呂など、マニアに知られています。
大概は秘湯マニアの有志により湯船が整備されていることもありますが、一部には土地の所有者に無断で作られたものや国立公園内に違法に作られたものも存在するようです。
当然のことながら水道などはないので湯温の調整ができないため、入浴に適しているとは限りません。
野湯2
全くの自然の中に噴出する温泉でなく、整備された源泉から利用されないで捨てられているものを集めて入浴する野湯もあります。
温泉ファンによって入浴施設が整備されているケースが多く、和歌山県の「湯の谷温泉」や、伊豆の「河津浜温泉」にある海岸の湯船などがこれにあたります。
かつて「松崎温泉」の源泉井の下には源泉井からこぼれ出た湯を集めた湯船もありました。
湧出した湯を集めたものだけでなく、既に利用された後の廃湯を湯船に集めている場合もあります。
また、廃業した旅館などの湯船を利用して入浴する場合も野湯に含まれるでしょう。
但し所有者が入浴を許可している場合以外は不法侵入などの法的な問題点が生じる行為になりますから注意が必要です。
かつて「那須温泉郷」にあった「高雄温泉」の旅館跡地の露天風呂などがこれに該当します。
但し、高雄温泉の露天風呂は、現在は再び旅館が整備されたため、野湯ではなくなっています。
「大塩温泉」は、かつて共同浴場として利用されていた湯船で、春先にのみ温泉が湧出するという珍しい温泉です。
利用は開放されているのですが、テレビの番組などで取り上げられることもあったためか、心ない人たちによるゴミの放置などマナーの問題が発生しています。
外湯
外湯(そとゆ)とは各地の温泉街に存在する、宿泊や休憩施設を伴わない単独の公衆浴場や日帰り入浴施設のことを言います。
これは内湯に対する対義語ですが、城崎温泉「さとの湯」など全国に古くからある温泉郷には殆どと言っていいほど存在しています。
源泉の開発技術が乏しかった時代に温泉は自然湧出源泉に限られていました。
湯量が限られていたことや、温泉は皆の共有財産で誰かの占有物ではないという考え方から、湯船は源泉が湧出する場所に共同の浴場として作られ、旅館がその周辺に建てられていわゆる温泉街が成長してきたのです。
当時の宿泊客は旅館の外にある共同浴場に足を運んで温泉を満喫するのが普通だったのです。
大正時代以降になって源泉開発技術が向上に伴って、旅館ごとに独自の源泉を持つようになりましたが、その頃から旅館独自の湯と旅館の外の湯ということで、内湯、外湯という区分が生まれたのです。
源泉という意味合いから「元湯」と呼ぶ温泉もあるようです。
また、外湯の多くは地元の人が管理している共同浴場でしたが、今では休息施設を併設した日帰り入浴施設も多く存在しています。
湯治場
湯治場(とうじば)とは、湯治、即ち治療や療養を目的に長期滞留する温泉地のことを言います。
一般の温泉旅行のような短期の観光客や保養客を対象にしているわけではないので、山間僻地の質素な温泉地が多いと言えます。
そのため、多くは電波が届かない立地条件や、腐食が激しくて設置できないなどの理由で娯楽施設やテレビなどもない場合が多く、宿泊施設もアパートのような何の飾り気もないものが多いので、観光気分で出かけるにはあまり楽しいところとは言えないかも知れません。
殆どの場合は、自炊が基本となっています。
これは長期滞留客の金銭的負担を軽減できるという理由もあるのですが、湯治客の症状によっては、日々の食事内容に制限がありますし、個々が自分にあった食事を行う必要があること、同じ宿に連泊することでどうしても同じような料理になってしまうため、飽きてしまうという理由もあるのでしょう。
また、それぞれの湯治客が普段と同じ食事をすることで心身を落ち着かせる効果もあるのかも知れません。
湯治客のための共同炊事施設が整っていて鍋釜や食器の貸し出しや食材の販売などを行っている湯治場もあります。
海外の秘湯・トルコ編
海外の秘湯についてご紹介しましょう。
海外の人たちは基本的に“温泉に入浴する”という習慣はありませんでしたので、温泉客が大勢訪れる温泉地そのものが秘湯といっても差し支えないかも知れません。
東欧のトルコにある温泉の例をご紹介しましょう。
あまり知られていませんが、トルコには温泉が湧き出す場所が数多くあります。
中でも最もユニークな温泉が、皮膚病を治す魚が住むという「バルクル・カプルジャ」です。
この温泉はトルコのほぼ中央部に位置するシワス県の町、カンガルの北東約17kmの所にあります。
荒地の真ん中にぽつんと建つホテルの敷地内に、36度の温泉が流れる小川があり、何とその中にはドクターフィッシュと呼ばれる体長2~10cmほどの小さな魚が棲んでいるのです。
ホテルにはこの小川を引き込んで作った温泉プールがあり、そこに小魚たちも流れ込んできます。
この小魚は人間の皮膚の表面に付いたアカなどを好んで食べるため皮膚の新陳代謝が活性化され、皮膚病に効果があるといわれていて、それがドクターフィッシュと呼ばれる所以で、今では世界中から皮膚病の療養を目的とした人たちがやって来るそうです。
海外の秘湯・カナダ編1
海外では温泉そのものに入浴する習慣が殆どないのですが、秘湯と呼べるかどうかは微妙ですが、カナダはバンクーバーの近くにあるルシアーホットスプリングス(Lussier Hot Springs)をご紹介しましょう。
フェアモントから車で約1時間ほど走り、切り立った断崖や森を抜けると、ホワイトスワンレイク州立公園の中にある小川のほとりで温泉が豊富に湧き出す天然の露天風呂が突然現れてきます。
道沿いの駐車場から階段を下りると、渓谷沿いに岩組みの露天風呂が3つ。それ以外は脱衣所もありませんので着替えは車の中で済ませなければなりません。
湯温は39~41℃と日本人にはちょうど良い湯加減です。
この周辺の湖ではマスが釣れ、湖畔にはムースがよく姿を見せるということです。
湖や川の向こうに見えるクートニー山脈の素晴らしい景観が望めます。
続いて、アインスワース・ホットスプリングス(Ainsworth Hot Springs)。
ネルソンから北に約40kmに位置し、鍾乳洞のような洞窟がそのまま温泉になっているユニークな洞窟温泉があります。
銀を探すために掘削作業をした結果、銀ではなく温泉を掘り当てたということです。
パーセル山脈とクートニーレイクを見下ろせる屋外温泉プールもあり、ゆっくりとくつろぎながら温泉を楽しむことができます。
海外の秘湯・カナダ編2
海外の秘湯としては、カナダにもいくつかあります。
ラジウムホットスプリングス(Radium Hot Springs)もその代表的な秘湯と言えるでしょう。
お湯には微量のラドンが含まれ、世界的にも大変珍しい放射線泉の温泉です。
古くからこの温泉を愛用していた先住民の間で、多くの疾病に効果があると知られていたそうです。
1922年にクートニー国立公園の一部となって以来、世界中からその癒しのパワーを求めて観光客が訪れるとのことです。
垂直に切り立った壮観なシンクレアー渓谷の崖下には、湯温27℃と39℃の2種類の温泉プールがあ理ます。
日本の温泉のように裸で入浴する習慣はないので、家族揃って水着で入ります。
さらに、フェアモントホットスプリングス(Fairmont Hot Springs)では、毎晩525万リットルもの天然温泉が湧出するといわれている豊かな温泉です。
有名な屋外温泉プールのほか、丘の上に岩をくり抜いてバスタブにしたネイティブバス、温泉が滝となって流れ落ちる滝壺温泉があり、野性的な温泉が楽しめます。
硫黄、重炭酸塩、カルシウム、マグネシウムなどを含有し、湯温は40~43℃とやや熱めですが、温泉リゾートホテル内のスパも充実しています。
海外の秘湯・エジプト編
世界には想いもよらぬ所に秘湯があるものです。
砂漠にも水が湧き出るオアシスが存在することは誰もが知るところですが、なんと!このオアシスに温泉が湧き出ているところがあると言うのです。
その代表的なものではエジプト・カイロの南部に位置する「ババレイヤ・オアシス」です。
このババレイヤ・オアシスの中にある村にコンクリートで固められたプールがあり、地下から湧き出る温水が注がれているのです。
ただし、私たち日本人から見ると何とももったいない話なのですが、地元の人たちには湯船にお湯をはってつかる入浴習慣がないのです。
そこで現地の人々はこの温泉をもっぱら洗濯や食器洗いなどの家事や農業用に使っているんだそうです。
ところがこの村は周辺の観光ツアーの休憩地にもなっているため、日本人など東洋から訪れている観光客が休憩を兼ねて入浴を楽しんでいるんだそうです。
暑い砂漠で温泉は如何なものか?と思う方もいらっしゃるでしょうが、空気が乾燥しているため、肌の水分補給には欠かせないのだそうです。
地元の人たちにも是非砂漠の秘湯を楽しんでもらいたいものです。